シリーズ『伝統都市』とは
都市史研究のめざましい拡がりは、現代世界がかかえる課題と強くつながっている。日本前近代における都市の社会や空間、文化の諸相を実証的に明らかにする研究の積み重ねにもこのことは表われている。
そして来年の春の刊行開始にむけてすすめられている『シリーズ伝統都市』(全4巻)である。吉田伸之先生と伊藤毅先生が編者となって、「都市史研究の新たなステージ」をめざし企画されたものである。
本シリーズの特長は、「伝統都市」とは何か、日本史・建築史を中心に東洋史、西洋史、また古代史から近代史と通時代的・世界史的に、日本文学、美術史、考古学など多彩な研究者によってあらゆる角度から比較検証されることである。具体的には4つのテーマ、つまり「都市イデア」「権力とヘゲモニー」「都市インフラ」「社会的結合」を掲げ、五十余名の執筆者陣が月に一度開催された研究会においてそれぞれの構想を論じ、そして深められてきた。この成果の全貌をぜひ期待していただきたい。(東京大学出版会山本徹氏)